[mixi] テトリスにおけるインターフェースと心理

「教育原理」という教職系の授業でレポートの課題が出たため昨日の夜から書いていたのだけど、もうダメダメですよヽ(;´Д`)ノ

大学生にもなって、なんだってこんなネタを選んだのだろうと書き終わって激しく後悔_| ̄|○

書いてる最中は激しく燃えたのになぁ(トホホ) ラブレターを書いて次の日に見返した気分だ(笑) というわけで全文公開。

課題

 教育、発達、インターフェースに関する心理現象を授業で  解説した概念を用いて説明しなさい。   例:なぜ使いにくい機械は使いにくいのか

ゲームが脳に与える恐怖

「ゲーム脳の恐怖 (著:森 昭雄)」が出版されて以来、テレビゲームが人間の脳に対して悪影響を与えると叫ばれている。

脳神経科学者である著者の森氏によれば、判断力や感情の抑制など、人間らしさ(理性)を保つ働きをしている脳の前頭前野が、ゲームを始めると痴呆者の脳波とそっくりな状態になる。この「ゲーム脳」になってしまうと、ゲームをしていないときでも同様に、脳の働きが鈍くなってしまうらしい。

これば真実であれば教育現場としては、生徒にゲームをしないよう喚起する必要があるかもしれないが、目に見えた悪影響がないのであればそのような規制は難しいのかもしれない。

ゲームと教育

ゲームをやると脳に悪影響が出る、という否定的な意見がある中、ゲームは“教育”や“学習”にもいかされている。実際にプレイステーションやゲームボーイなどでは英会話、英単語、小学生向けの漢字や九九などが学習できるものが古くから存在している。

ゲーム業界でも「教育(エデュケーション)」分野は一つのカテゴリとして認知されている。また持ち運びができるゲーム機であれば場所や時間を問わず、レベルの高い学習が期待できるかもしれない。

ゲームにはまる日本人

「ゲーム」と「教育(学習)」が関連しているということが分かったところで、以下のようなブログを目にした。

日本人はテトリス病に侵されている(小鳥) http://coolsummer.typepad.com/kotori/2004/03/post_26.html

▼以下引用

最近、電車に乗ると、半数ぐらいの人が、携帯電話を見て、カチャカチャ 何かやってます。 僕の統計によると、大抵そういう人たちは、メールを打ってるか、テトリ スをやってます。 「ゲームをやってます」じゃないですよ。「テトリスをやってます」です。 ほとんど100%の確率で、そうです。テトリス以外、例えばA列車で行こうと かやってる人は、見たことありません。複雑なRPG みたいなものもあるそ うですが、やってる人見たことありません。

そしてこう続く。

テトリスには、何だってこんな麻薬のような効果があるのでしょう? 確か、元々はソ連の心理学の実験用ソフトなんですよね? でもそれはゲームの麻薬効果の実験じゃなくて、「何種類の形状までなら 人は瞬時に見分けることができるのか」みたいな実験だったと聞いたこと があります。

これは教育原理のレポートにまさにうってつけてではないかと思い、今回の「テトリスにおけるインターフェースと心理」を書こうと思った次第だ。

テトリスとは何か?

テトリスは今や説明するまでもないくらい国民的なゲームであり、そのルールは非常にシンプル。上から下に落ちてくる特定パターンのブロックを、画面下にどんどん積み重ねていく。横のラインが揃ったらその列は消える。消えた列の数によって得点が異なるという物。

テトリスを開発したのは、ロシアの心理学者「アレクセイ・パジトノフ」だった。彼は人間が図形のパターンをどれくらいを認知できるかテストするためのプログラムを開発していたが、エンターテイメント性を感じゲーム化。その後イギリスのミラー社が権利を取得、世界中に普及することになる。

現在、日本に置いてもパソコン版はもちろん、ゲームボーイ、プレイステーション、NINTENDO64などの家庭用ゲーム機、携帯電話上で動作するアプリケーション(iアプリ、ezアプリなど)、独自の携帯型ゲーム機も一時期話題となった。変わったところではワープロ専用機や、Webブラウザ上(JavaScript,Javaアプレット,FLASHなど)で動作する物も存在する。

人はなぜテトリスに熱狂するのか

レポートの冒頭で出てきたブログの通り、なぜブロックを積み上げ消していくだけのゲームにこれほどのめり込むのかを考察したい。

結論から言おう。 私は以下の3つの要素がそれをさせているのだと考える。

・ハードルの低さ ・永続性 ・向上心

それぞれについて見ていきたい。

ハードルの低さ

テトリスのインターフェース

これだけ広範に移植されながらそのインターフェースは非常にシンプルだ。

(1)ブロックを左右に動かす (2)ブロックを一気に下に落とす(もしくは落下速度を加速) (3)ブロックを回転させる ※回転には右回り、左回りが独立している物もある。

実際に必要なボタン数はどうだろうか?

(1)ブロックを左右に動かす 必要ボタン数=2

(2)ブロックを一気に下に落とす 必要ボタン数=1

(3)ブロックを回転させる 必要ボタン数=1 or 2

多く見積もっても5つである。

【認知科学的論理】  人間は数字でも文字でも名前でも同じ程度(7プラスマイナス2個程度)の  個数を記憶できる

ここまでテトリスが世界中に広まった一つの要因として、インターフェースの単純さ、操作方法を覚えることのハードルの低さが伺える。さらに以下の考え方を拡大解釈してみると、

【認知科学的論理】  人間は意味ある単位をひとまとまりにして、それを1つの情報として覚える

(1)~(3)いずれの操作もブロックそのものの動作に関連する物である。 右に動かすことが出来れば左にも動かせるだろうし下に落とすこともできだろうと大抵の人は想像を働かせることはそんなに難しくないだろう。さらに適切な位置を自分で決めるため回転という動きが加わる、すべてが意味のある動作ということになる。

裏切ることのない“道具”

これはゲーム全般に言えることだが、ユーザーがボタンを操作することにより、その瞬間画面上に変化が起こる。もう少し具体的に言うならボタンの動きに連動して画面上に変化が起こる。

テトリスの場合、自分が操作した結果、思っていたことと違う動作をされることがない、つまり100%「裏切られない」のだ。

このボタンはいわゆる「道具」と見ることができるのではないだろうか。 例えばハサミは道具だ。紙を二人にきりたいという意志を実現するためにハサミを使う。ボタンの場合、ブロックを自分が適切だと思ったところに落下させたいという意志を実現するためにボタンを操作する。こう考えると『ボタン=道具説』は成立すると思われる。

もう少し見てみよう。 “道具”かどうかを決定づける条件に以下のような物がある。

【認知科学的論理】  (1)非規範性-道具は指示を出さない。  (2)手段性-人間の目標達成の手段にならなければならない  (3)透明性-使われるときに人間の意識に上らない。              ~「新・コンピューターと教育」より~

(1)と(2)については問題ないだろう。 (3)も最初の数分は悩むことがあるかもしれないが、大抵の人はすぐに覚えてしまう。なぜなら前述の通り、操作方法が単純だからである。

つまり、(少なくとも)テトリスのボタンは目標達成の手段となり裏切ることのない道具だと言える。

ハードルの低さとは(まとめ)

ここでいうハードルの低さとはいわゆる「インターフェースのシンプルさ」「道具的な操作方法」という点である。

誰にでもすぐにわかる操作方法が参入障壁を圧倒的に低くしていると言える。 操作方法が複雑であればあるほど対象者は絞られてくる。パソコンがまさにそうだ。メリットがあれば人は必死になって覚えるが、それがなければ“諦める”。つまりシェアがそれだけ落ちると言うことになる。言葉を変えれば人を選んでいるともいえる。

テトリスはハードルの低さによってこれだけのシェアが得られたといっても過言ではないかもしれない。

永続性と向上心

永続性と向上心

テトリスは終わることのないゲームである。 一応、得点数に応じてレベルが分けられており、用意されたレベルを全てクリアすれば終了というのが一般的となっている。 ※エンドレスで出来るモードもついている場合が多い。

操作性がシンプルであるというだけの理由で人々は熱狂しない。 そこにこの終わることのない「永続性」と、意識しないレベルでの「向上心」の二つがシナジー(相乗効果)をもたらしているのだと考える。

ここではもう少しテトリスについて掘り下げ、上記の理論を説明したいと思う。

ブロックの形状

テトリスのブロックは基本的なルールのもので7種類が用意されている。 (亜種ではさらに複雑な形もあるがここでは考慮しない)

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ここでも以下の理論が活躍する。

【認知科学的論理】  人間は数字でも文字でも名前でも同じ程度(7プラスマイナス2個程度)の  個数を記憶できる

またテトリスが開発された歴史をもう一度見ていただきたい。

テトリスを開発したのは、ロシアの心理学者「アレクセイ・パジトノフ」 だった。彼は人間が図形のパターンをどれくらいを認知できるかテストす るためのプログラムを開発していた....

ただしここではボタン操作と異なり、

それぞれに何かしらの意味があるとは言い難く、 出てくる順序もランダム

ここにパズルとしての要素、つまり『難しさ』が加わっていると言える。

一画面の列数

簡単に調べた結果、一画面の列数は

8 ~ 11列

となっている。 特に画面の大きさに制約のある携帯タイプのゲーム機(ゲームボーイ除く)は総じて少なくなっている。

ここで面白いのは人間が一度に記憶できる列数よりも少しだけ多い点である。瞬間的に状況を把握しようにもキャパシティをわずかに超えているという点で、迷いやミスが生じる。ここにも『難しさ』が加わっていると言える。

※ここに画面写真数点

永続性と向上心(まとめ)

操作性以外の点の要素を見ると、面白いことに、出来るか出来ないかのギリギリのところが値として設定されている点である。心理的な動きを見てみよう。

・ある程度は誰でも出来る ↓ ・でもある一定の箇所からはできなくなる ↓ ・でも同じことの繰り返しなんだからもう少しがんばれば  できるかもしれない。  (スピードが上がるのみで基本的なルールは全く変わらない)

知らず知らずのうちに「向上心」が刺激されているのかもしれない。人は新しいことを経験すると快感をともなう脳内物質が放出されるらしい。目標を達成した場合も同様のことが言えるのかもしれない。

この快感を得たいがために、人はテトリスに熱狂するのではないだろうか。

テトリスではシューティングゲームやアクションゲームと異なり、一回や二回ミスしただけでゲームオーバーになることはない。逆に言えばひらめきなどの腕、偶然性が影響し、ミスした箇所のリカバリーが出来る点も大きい。

・ミスをした ↓ ・でもがんばればリカバリーできるかもしれない

自分の努力によって勝ち取る喜びを、「積み重ねる」働きもある。しかも前述の通りテトリスは終わることがないエンドレスなゲームである。

脳内物質(エンドルフィン)は一種の麻薬的な効果があるらしい。テトリスに、この分泌をうながす麻薬的な効果があってもおかしくないのかもしれない。

参考URL

森氏:テトリスは殺人教育ソフト(AllAboutJapan) http://allabout.co.jp/game/gamenews/closeup/CU20040117A/

テトリス~モスクワ小夜曲(前編) http://allabout.co.jp/game/gamenews/closeup/CU20020901A/index.htm

日本人はテトリス病に侵されている(小鳥) http://coolsummer.typepad.com/kotori/2004/03/post_26.html

テレビゲームの進化史 コンテンツ篇 http://www.netshopboys.or.jp/tvgm/japanese/text/archives/019.html

ゲームの面白さとは何だろうか (慶應義塾大学三田哲学会叢書 ars incognita)
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