映画『シェイブ・オブ・ウォーター』レビュー ★★★☆☆

【ネタバレあります】 劇場で見てきました。目を見張るレベルの怪作。

予告編


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『これって映画…なのか!?』

封切り1週間後の劇場で席が半数近く埋まっていました。正直驚きました。予告編を見ただけで人を選ぶ作品なのはわかるだろうに。好きな人はその世界観やお話の虜になれる反面、ハリウッド的な作りの映画が好きな人にはほんと受け付けないだろうなというのが第一印象。アカデミー賞で4部門、ゴールデングローブ賞で2部門を受賞した話題性が手伝ったのか、普段それほど映画館に来ないであろうお客さんもチラホラいらっしゃいました。近くに座っていた方の終映後の第一声が「これって映画…なのか!?」

恐らく期待していた物と違ったんでしょうけど、ただ気持ちもわかるんですよ。舞台となる場所は研究所とアパートが中心で、映画というよりも舞台を見ている感覚。途中前触れもなく主人公が歌い上げるミュージカルパートもあり、独特のフォーマットになっているのです。自分は舞台経験があるので正面から受け止められるのですが、耐性が無い人には衝撃かもしれません。

あえての低予算ムービー?

さて肝心の内容ですが、「パシフィック・リム」「ホビット3部作」のギレルモ監督が送る、男前な半魚人と声を出すことのできない女性のラブストーリー。ド派手な作品が続いてるヒットメーカーの監督ですが、今回は打って変わりいわゆるハリウッド感は皆無、ヨーロッパ方面の低予算映画を見ているような心境でした。

実際、予算はほとんどつかなかったのではないかと思える映像。もしくはあえて予算をつけなかったか…。こんな話がTwitterに流れていました。

大人の事情で使いたくもない俳優やアーティストを入れなければならない…的な展開。よくある話ですよね。監督が作りたい作品を作るため、主導権を握るためにそうしたような気もさせられます。大作が続くとこういう派手さはないけれど味のある作品を作りたくなる気持ち、わかる気がします。

いやー、間違いなく自分がハリウッドの偉い人で、この企画書見せられたら通さないかリテイク出すと思うんですよねw 恐らく半魚人は巨大化するし、米軍も出動するし、世界が危機に陥るような注文をつける気がしますw 半魚人が群れをなして反撃して…それを食い止める人間側のヒロインと半魚人とかは「It is ハリウッド」って感じですよねw そもそもギレルモ監督の名前を出すんだから観客もいわゆるハリウッド的というかオタク層に響くようなスケールのでかい映画を期待するだろうし、そのほうが会社としても儲かることが想像に難くないわけです。実際パシフィック・リムの続編の「アップライジング」は余程のことがなければもう成功したようなもんですしね。 eiga.com

それを経て実現したのも、会社としても過去の実績に対するご褒美と、監督の熱意の賜物かもしれません。ここらへんの背後にあるお話もどこかで聞いてみたいですね。

宇宙開発競争、暗躍するロシアンスパイ、神と崇めらた不思議な生き物

これくらいスクロールしたところならネタバレしてもいいよね?

物語は大きく2つのパートに別れています。 前半は研究所で主人公と半魚人が出会い交流を深めるシーンから始まります。元々南米(だったかな)で原住民に神として崇められていた半魚人が捕獲され連れてこられたのですが、現場責任者の男性は快く思っていない。行きたまま研究するはずが、一刻もはやく終わらせたい現場責任者の圧力で解剖されることを知った主人公が周りの協力を得ながら自宅に避難させます。

後半は半魚人との共同生活を経てお互いの(文字通り声にならない)思いを交わしつつ、現場責任者の追跡、暗躍するロシアのスパイとてんこもりの展開を経ての別れのシーンで終幕となります。非常にシンプルなストーリーながら要素てんこ盛り。おとぎ話と言っても時代背景が中世やファンタジーな世界でもなく1950年代以降の宇宙開発競争が盛んだったアメリカ、まさにNASA的な研究所が舞台。開始早々、登場人物がロケットエンジンを掃除するシーンはギョッとしました。……いや、魚を模したギャグではないw

総評

星3つ。目を見張る怪作ではあるのだけど、個人的には肌に合わなかったなー。

生まれつき声帯を痛め声を出すことができない主人公、 人間の言葉を話すことができない不思議な怪物、 二人は次第に心を通わせ…

が主題ではあるのですが、主人公が不思議な生き物に心を奪われる過程がいまひとつピンと来ない。お互いの距離が近づくためのエピソードがもう少し欲しかった。だって主人公は下手したらこれまでの生活を全て失い犯罪者として生きる…下手したら現場責任者に殺されていたのかもしれない、そんなリスクを犯してまで逃亡を計画する原動力が今ひとつ見えて来ない。一目惚れなのかもしれないけど、それはそれでもう少し描いてほしかった。

後半の半魚人との共同生活は非日常な「日常系」として見ると中々に興味深いのですけどね。家に帰るとメイドの姿のドラゴンがいる小林さん家のメイドラゴンみたいなもんですしね。え、違う?(;´∀`) 閑話休題。後半のこのシーンがいかんせん間延びしすぎてちょっと時計を何度か見ちゃいました。桟橋に行くのはもっと早くても良かった。

maidragon.jp

気になるツイート

公式には「半魚人」ではない?

作ってみた

冷蔵庫から大量に現れたシーンは笑いましたw このパイを中心に主人公と絵描きの老人の関係性が明らかになる重要なアイテム。

この二人は一体どういう関係なの? なぜ男性は主人公に手を出さないの?あたりの疑問がパイとこのパイを出すお店によって明らかに。 主人公が嫌がるほど美味しくない、しかもチェーン店って一体どんな味なんでしょうねw

入浴剤

これはw 自作されたんでしょうか??

ポプテピ難民

映画館に行く前に見てはいけない画像w シリアスかつ、胸がスカッとするシーンなんですが、台無しやw

概要

『シェイプ・オブ・ウォーター』(The Shape of Water)は、2017年のアメリカ合衆国の恋愛ドラマ映画。ギレルモ・デル・トロが監督を務め、ヴァネッサ・テイラーと共同で脚本も担当している。出演はサリー・ホーキンス、マイケル・シャノン、リチャード・ジェンキンス、ダグ・ジョーンズ、マイケル・スタールバーグ、オクタヴィア・スペンサーなど。 2017年8月に第74回ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門で上映[3]されて金獅子賞を受賞[4]し、第42回トロント国際映画祭(英語版)で上映される[5]。北アメリカで2017年12月8日に一般公開の予定である[6]。暴力描写や自慰行為の描写があるため日本国内では、東京国際映画祭で公開されたオリジナルバージョンはR18+指定で公開され、2018年3月1日に公開されるものは1か所をぼかし処理したR15+指定バージョンのものである[7]。第90回アカデミー賞では作品賞など4部門を受賞し、第75回ゴールデングローブ賞でも2部門を受賞した。

Wikipediaより

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6歳の幼きギレルモ・デル・トロが観た映画『大アマゾンの半魚人』に端を発した今作。 ゴールデングローブ賞作曲賞に輝いたアレクサンドル・デスプラが手がけた豊かな音楽たち、実力派俳優たちが演じる様々な過去を抱えた登場人物、そしてデル・トロがこだわりぬいて制作し、ダグ・ジョーンズにより息を吹き込まれた美しく愛らしいクリーチャー、全編を通じて観客をとりこにするこだわりのカラーリングに、日本画にヒントを得たという魅力的なセットや小道具たち etc.様々な面を持つ見どころ満載の映画『シェイプ・オブ・ウォーター』のメイキングに迫る1冊です。 主要キャストへのインタビューはもちろん、デル・トロによる登場人物の詳細設定の資料や制作のヒントが記録された“創作ノート"を一部掲載。デル・トロ映画の常連スタッフ、ガイ・デイヴィスが手がけたコンセプトアート、デル・トロの隠れ家“荒涼館"に収集されている造形物も多く手がけるマイク・ヒルによるフィギュア、プロダクション・デザインを担当したポール・デナム・オースタベリーや、視覚効果のデニス・ベラルディ、特殊メイクのショーン・サンソム、衣装デザインを担当したルイス・セケイラ、 そして今年度ゴールデングローブ賞で見事、作曲賞を受賞したアレクサンドル・デスプラのインタビューも網羅。

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