【ネタバレあり】 劇場で日本語吹替版を見ましたが、結論から言うとがっかり作品。 しかしながら思わず声が出る絵作り、猫があまりに演技派で一挙手一投足から目が離せないなど楽しませてくれるポイントも多かったです。
予告編
主役は復讐鬼と化したクロネコ
お話の構成は「探偵」「刑事」物のフォーマットを使用したシンプルな作りで、ホームズ役の空海が関係者にヒアリングすることで少しずつ楊貴妃の本当の死の原因が明らかになっていくというもの。というわけで正直空海でなくても成立します。まぁ宮中に出入りできて不思議な法術?が使える有名人というとかなり絞られるわけですが、「世にも奇妙な物語」のタモリさんと大差ありません。
じゃあ誰が主役なんだと言えば、不思議な妖術を操り人間の言葉を話す「クロネコ」が劇中一番の演技派として活躍してくれます。ネット上ではすでに公然の事実になってますが完全にこの黒猫のお話ですw
「ネコ」と和解せよ
この「ネコ」がやたら強い。見目麗しい動作で観客を萌え苦しませてくれるのですが、劇中では復讐鬼となり向かってくる者を容赦なく葬ります。冒頭で空海が宮殿に訪れた時には呪いとして処理されるのですが(対外的には風邪をこじらせたということに)、やがて兵士を交えての白兵戦に突入した際にはもうこれが強い強い。小さい体を活かし攻撃をひらりと交わし、喉元をするどく切り裂く。誰も勝つことはおろか姿を追うこともできずターゲットとなった要人は逃げ惑うことしかできない有様。その勢いはこのまま国を滅ぼすんじゃないかという…。
ネコの声がするだけで、影がスクリーンに映るだけで、肉球…もとい前足を振り上げるだけで見ているこっちが思わずゾッとします。実際、ネコに引っかかれたことがある人ならわかると思いますが本気でかかってこられると血が吹き出しますよねw ネコも人間の力で大きなサイズにすることは可能なようですが、なぜ小さいままかというと、大きくしてしまうと人間が簡単に殺されてしまうからという話しを聞いたことがあります。ペットとして飼うには今のサイズがギリギリなんでしょうね。
そもそもこのネコは何者なのか、なぜこのようなことを繰り返すのか…タイトルにもある通りやがて楊貴妃の死につながっていくその様をホームズ役の空海と、ワトソン役の宮廷詩人の白楽天が解き明かしていきます。
助演男優賞を送りたい演技派のネコ
CGなんですが、ほんと目を見張る演技をしてくれます。憎しみにあふれた様、文字通り「猫を被る」様は可愛いという感情の後ろに畏怖すら覚えます。クライマックスで本当の気持ちを吐露するシーンではそれまでの長い年月を考えると、胸に迫るものがあります。
しかしこれモーションキャプチャとかしてるんですかね? 人間の場合は身体の要所や、顔の筋肉の動き(表情ですね)を記録するための目印をつけて記録しますが、ネコのフェイシャルってどうしてるんだろうw 身体の動き自体は撮ることが可能なんですけど、手で作り込んでるのかな。それにしてもボツになったシーンも含めると膨大な作業量になりますからねぇ。ここらへんの裏話もCGは関連の技術セミナーや技術本とかで目にできると楽しそうw
素材は良いが調理法が…
ではなぜ残念映画かと言えば、端的に言えば「話が退屈」の一点につきます。 素材は良いのです。
- 国を滅ぼし兼ねないと言われた絶世の美女こと楊貴妃の死の真実
- 不思議なチカラを持つ謎のネコ
- その謎を解き明かす法術使いの僧侶こと空海
まるで極楽のような絢爛豪華な宴の中で行われる人間ドラマ…空海が山を降り、大嵐の海を渡るシーンも大迫力です。しかしそれをつなげる肝心のお話が稚拙。JRPGのお使いを横で見ているような状態が延々と続き、結局楊貴妃の死の原因も想像の域を出ない。状況から「ロミオとジュリエット」的なすれ違いも想像したのですが、出来損ないのロミジュリ的な展開。それと比べると「クロネコ」の出自やドラマは中々に目を見張る物があります。なぜこれをメインに持って来なかったのか。よほど面白い展開に出来ただろうに。
繰り返しになるのですが素材は良いのです。しかし…肝心の料理法が残念。というわけでクロネコの好演はありながらも☆2つしました。
あ、CG褒めてる箇所ありますが非常にムラがありますw 時間がなかったのか人手か予算かわかりませんが、あまりに雑な部分が時々現れてゲンナリもしますw 予告編は最も良い部分ですのでこのクオリティが延々続くわけではないです。無念。
「空海」を全面に押しているのは日本だけ?
さて、ネット上でも物議を醸している邦題ですが、映画「Gravity」の日本語タイトルが「ゼロ・グラビティ」であったことが当時祭りになりましたよね。これもネタバレになっちゃいますが、主人公が無重力の世界で死ぬような目に何度も会い、チームの大切なメンバーの犠牲、地球の応援を受け帰還、ラストシーンで念願の大地に立った主人公が味わう「重力(Gravity)」。そんなお話で原題と間逆なタイトルを付けるのはいただけないというのは非常に共感できました。
今回の「空海」はGravityほどでは無いにせよ、やはり違和感を感じます。まず原題は「妖猫传」、英題は「Legend of the Demon Cat」となっており基本的に「猫」がお話の中心であることを謳っています。実際ご覧になった方なら納得の展開だったでしょう。
阿部寛
いや、ネタなんですがね、阿部寛がグワッと登場するまで楊貴妃が楊貴妃としてあまり出てこないんですよ。もうね、いつ仲間由紀恵が登場するのかとハラハラしながら見ていました。題材的に「どんとこい超常現象(ドンコイ)」ですしね。TRICK最高ですよね←
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もういっそTRICK調で作ってくれれば最後まで飽きなかったw
日本語吹替版しかない?
個人的に海外の映画は字幕で見たい派なんです。 2回目以降は吹き替えも楽しく感じるのですが、最初はなるべく素材をそのまま楽しみたい。吹き替えはどうしても脳内で「あ、声当ててるな。ほんとは何言ってるんだろう」という思考が走って集中できないんですよね。あと言語が違うと「異世界感」が味わえてやはり楽しい。字幕は慣れると一瞬で頭に入りますし、英語であれば何言ってるか(どう翻訳してるか)もある程度わかるのでまた違った楽しみ方もできます。
空海はどの映画館の上映情報見ても吹き替えしかないため行きつけの映画館のTwitter垢に訪ねたところ、配給の都合で存在しないとのリプライをいただきました。oh…(;´Д`)
お問い合わせありがとうございます。「空海」は配給会社の方針で、日本で上映されるバージョンは全国的に吹替版のみとなっております。何卒、ご了承いただけますと幸いです。
— チネチッタ川崎 (@cinecitta_jp) 2018年3月11日
なるほど、そうでしたか。
— 勝部麻季人@JK (@katsube) 2018年3月11日
観念して?心置きなく吹替版を拝見に行けます。教えていただきありがとうございます!
内心はがっかりモードでしたw 円盤には入るのだろうなと思ってましたが、その後インターナショナル版の上映も決定したようですね。もうちょっと待てば良かったw www.cinematoday.jp
インターナショナル版(中国語音声/日本語字幕版)の上映が決定した。3月24日より全国19か所の劇場で上映される。 私はもう行きませんが、吹替えしかなくて躊躇していた方はこの機会にどーぞ。
気になったツイート
中国版のポスター
Twitter上に中国版のポスターが上がている方がいらっしゃいましたが、ご覧の通りです。雰囲気ありますね!
映画「空海」の中国版ポスターがかわいいから見て pic.twitter.com/NsEjVe28ET
— ぐったり@22日は留年チャレンジ (@guttarisann) 2018年3月13日
中国版の空海のポスター神じゃん、、、 pic.twitter.com/un7fcvwvpx
— Rumi (@rumi_pickles) 2018年3月15日
— Rumi (@rumi_pickles) 2018年3月15日
もっとも、日本で同じようなテイストでやっても響かないだろうという配給の危惧も理解できるのですが、もう少しやり方あったんじゃないかなぁ。
セット跡地がすごい…!
おおお、本編よりこっちのセットが気になるw 日本の太秦的な感じなんですかね?別バージョンや別作品が生まれたりするのかな。
『空海』(妖猫传)のセット跡地、残ってる…遊びに行ける…入場料90元だって…年パス120元もあるよ…。
— にせみ (@niseumigame003) 2018年3月10日
襄阳唐城影视基地https://t.co/q5E1DD9kgR pic.twitter.com/A2ZaFRNSPW
概要
『空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎』(くうかい うつくしきおうひのなぞ、原題:妖猫传、英題:Legend of the Demon Cat)は、2017年制作の日中合作映画。 留学のため唐に渡った若き日の空海が、詩人・白楽天とともに唐の都長安を揺るがす巨大な謎に迫る姿を描いた歴史スペクタクル大作。夢枕獏の小説『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』をチェン・カイコー監督が映画化。 第30回東京国際映画祭にて、東京国際映画祭第30回記念のオープニングスペシャル作品として上映された
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