CNET公開前の原稿です。
某メルマガ配信スタンドをネタにしゃべってみるテスト。
本番の記事ではリンクがついたり、見やすくなってるハズ。
メディア運営者が犯す過ちを、Web2.0と交えて話してみたいと思います。
結論から言うと、自分が獲得したと思っていたユーザーは、実はあなたのユーザーになったとは思っていなかったというお話。なんかのコメディに出てきそうなお話ですね。でもビジネスだとこれが笑えないのです。
■ユーザーが自律的に造るメディア ユーザー自身が構築するメディアというのはかなり以前からありました。例えばまぐまぐやmelmaなどのメールマガジンスタンド。最近で言えばはてなダイアリーキーワード、ウィキペディアなどはその代表でしょう。個人的には2ちゃんねるなどの自律ぶりを見ると、これも該当しそうだと思っています。
これらのユーザー自信が造るメディアというのは、「Web2.0的だ」と言われます。現在、日本国内でWeb2.0の根本的な考え方、思想はTim O'Reilly氏の記事「What is Web2.0」に書かれた7つのポイントがベースになっていると言われています。 ※CNETに和訳が掲載されています。
その中でも今回紹介するのは以下の部分。
- 集合知の利用 オンライン百科事典の「Wikipedia」は、誰でも記事を投稿し、編集することができるという思いもよらないアイディアに基づいている。Wikipediaは信頼に立脚した進歩的な実験であり、「目玉の数さえ十分あれば、どんなバグも深刻ではない」というEric Raymondの格言(もともとはオープンソースソフトウェアの文脈で語られたもの)をコンテンツ作成に適用している。 Web 2.0:次世代ソフトウェアのデザインパターンとビジネスモデル(前編)より引用
このようにユーザーの手によって自律的に発展するメディアは、運営者(企業)が少人数の場合でも、実際にそれを編集するユーザーを大多数集めることが出来れば、とんでもない規模のメディアに成長することも夢物語ではありません。
非営利組織のように社会に貢献したいという目的で辞典などが作られる場合は、今回テーマにあげたようなことには大抵の場合ならないだろうと思われます。問題は営利目的の企業の場合。
■メディア運営者は中間地点に立っているか? 現在ではまぐまぐとmelmaに二極化されたメールマガジン配信スタンド。これらの企業は基本的に広告収入で運営されています。まぐまぐでは古くからメールマガジンの購読者に対して、公式マガジンを配信し、これに広告を掲載することで収入を得ていました。他の企業もこれに追随する形で同じモデルを歩みます。
ただ、広告媒体がメールだけでは限界があります。枠数は限られていますし、公式マガジンの種類を増やすのも限界があります。次に目をつけるのは Webです。Webページ上に広告を掲載し、そこへ何らかの方法でユーザーを呼ぶというモデル。これは必然的に起こりうる事態です。
ここで間違えてはいけないのは、メディアの運営者が抱えているユーザーは、本当にメディアに愛着を持って登録しているかという点です。
具体的に話しましょう。 あなたがいつものように、お気に入りのサイトを見ていると、そのサイトがメールマガジンの発行を始めたという告知を見つけました。もちろんあなたは自分のメールアドレスを入力して登録します。
この時、あなたはメールマガジン配信スタンドを少しでも意識したでしょうか?
このようなユーザーにメールマガジン配信スタンドがいくら声を投げかけても、あなたの心には響きません。週に何回か届く公式メルマガは、あなたにとってみたらノイズでしかありません。ノイズでしかないものは、メールソフトの振り分け設定でゴミ箱へ。このような広告メディアの将来性が明るいと、誰が予測できるでしょうか。
つまり、メディアと発行者、読者は次のような立ち位置にいると考えられます。
メディア ⇔ 発行者 ⇔ 読者
読者はメディアに語りかけることができますし、メディアを愛する読者もいるでしょう。しかし、ここで一番影響力を持っているのは発行者ではないでしょうか。発行者はメディアにも、読者にも影響を及ぼすことのできる存在だと言えます。
発行者が自立的に読者を次々と獲得することはメディアが望むことです。それだけ公式メルマガの発行部数が増えるわけですから、広告効果もそれに合わせて増加すると誰もが思うでしょう。
しかし、これが大きな過ち。発行者自信が読者を集めるということは、メディアを知らない読者が増えると言うこと。そのため、公式メルマガはノイズとしか感じないユーザーばかりが増えてしまう。メディアが望んだ行動を発行者が取れば取るほど自らのビジネスモデルが崩壊されるというジレンマに陥っていくのです。
■レバレッジを生み出せ 2006年3月中旬、melmaが発行者に向けて送ったメールにこうありました。
『株式投資時代のリスク分散投資』というテーマについて、 記事を書いてくださる発行者様を募集しております!
記事を書いてくださった方には、感謝の気持ちを込めて melma!事務局より【5,000マイル】を進呈させていただきます。
書いていただいた記事は、melma!のタイアップ特集ページに あなたのメールマガジンと共に掲載させていただきます。
またmelma!側で、タイアップ特集ページへの誘導を図るために、 PRを積極的に行いますので、あなたの記事は多くの方の目に触れる 機会を得られますし、メールマガジンの読者獲得にもつながります! 3月14日発行【melma!発行者会報】より引用
ようは広告記事の原稿を発行者に依頼しているのですが、ここでのポイントは、発行者に働きかけている点です。melmaの特集ページへ自分の記事が露出されれば、おそらく読者数も増えるだろうし、自分のメルマガの信頼度もアップするでしょう。なによりたくさんの応募者の中から選ばれ、たくさん人の目にとまるというのは、発行者からしたら誇らしい気持ちになることうけあいです。
またmelma側からすれば、ライターを探す必要がないという利点。影響力のある発行者さんをつかまえれば、発行者自身のメディアでもポジティブな気持ちで自ら宣伝してくれるというスケベ心もあるハズです。何より原稿料1本5000円(ポイント)を払えば、広告効果までおまけでついてくるということを考えれば、非常にメリットが大きいのではないでしょうか。
つまり、発行者1人に働きかければ、その何百、何千倍の影響力があるということです。
「レバレッジ」という言葉があります。株式などの用語にも使われますが、ようするに「てこの原理」のこと。少ない力でいかに大きな効果がを生み出すか、メディア側が今後運営していく上で、このレバレッジをいかに生み出せるかが、生命線になっていくのは想像に難くありません。
なお、melmaがそれをねらったかどうかは不明です。
ここではメルマガ配信スタンドを例にとってみましたが、これは楽天とそのショップでも言えることですし、ブログを提供する企業とブロガー、その読者の構図もわかりやすいですね。
また今回記事にしたのは、これまでに様々な場所で言われてきたことを総括したような形になりましたが、これからのメディアについて考えていく上で、当たり前のことではあるのですが、陥りやすいワナの一つだと言えるのではないでしょうか。
あなたのメディアはどうですか?